よいリーガルテックは、弁護士の生産性を飛躍的に向上させる

よいリーガルテックは、弁護士の生産性を飛躍的に向上させる

長島・大野・常松法律事務所

導入の背景

・過去の契約サンプルを探すのに時間がかかる

・既存システムは検索結果を横断的に確認できず使いづらい

導入の効果

・良いサンプルへのアクセスが飛躍的によくなり、効率性が上がった

・検索のスピード性、条項修正の労力が大きく改善された

・複数の基本雛形があり、合う雛形を探す時間が短縮した

日本有数のトップローファームである法律事務所、長島・大野・常松法律事務所(NO&T)は、以前からの課題であったナレッジマネジメントの実現にむけて、2019年よりMNTSQを活用していただいています。

実際の業務での運用効果や使い勝手について、NO&T所属弁護士であるカオ小池ミンティ様と金井 優典様にお話をお伺いしました。

写真左)カオ小池ミンティ様
第一東京弁護士会:2010年登録(63期)。2010年NO&T入所。
ホーチミンオフィス勤務を経て、現在は主にテクノロジー企業のアドバイザリーに従事。

写真右)金井 優典様
第一東京弁護士会:2019年登録(72期)。2019年NO&T入所。
エネルギー系企業におけるアドバイザリーに従事。


  • 導入前のナレッジ共有に関しての課題について教えてください。

カオ:
ナレッジシェアの課題としては、過去の契約のサンプルを探すのに結構な時間がかかる点がありました。

我々が作成する契約書は、文章、文言のひとつひとつがなぜそのような表現になっているか意味があり、書かれている言葉すべてが非常に練られています。そのため、契約書をゼロから作成することは大変な労力が必要であり、所内の過去の案件において作成された適切なサンプルからスタートし、過去の案件で同僚弁護士が行った努力を継承することは非常に重要です。

その一方で、弁護士が扱う情報は極めて機密性が高いものも多く、秘密管理の観点からは、所内のほかの弁護士が従事している案件を共有することには限界がある点に加え、共有できる範囲内のものについて所内でどのように効率的に共有するかという点が問題となります。

共有されているサンプルの量や最新性には課題があり、またナレッジを管理していたシステムの検索性があまり高くなかったため、検索に時間がかかり、結果が出るまでにコーヒーを買いに行くなんてこともありました(笑)

そのため、結局、その分野に詳しい同僚に連絡して個人的にサンプルをもらう必要があることも多かったです。

  • MNTSQを導入してみていかがでしたか。

カオ:
弁護士の業務において、良いサンプルが豊富にあり、それがすぐに見つかるということはとても重要だと思っています。

例えばM&Aの株式譲渡契約などは特に複雑な契約類型のひとつであり、同じM&A取引というのは他にはないため具体的な事案に応じてテーラーメードが必要であり、また、巷に出回っている契約の雛形のクオリティも千差万別です。そのため、当該案件にフィットしたよいサンプルにすぐアクセスできるかどうかで、作業時間は大幅に変わってきます。

以前より、所内にも多数のサンプルがありましたが、必ずしもそれらにアクセスできる状態ではなかったので、MNTSQを導入したことで、良いサンプルへのアクセスが飛躍的によくなり、かなり効率性が上がったと感じています。

また、契約書は自然言葉で書かれているが非常にロジカルで、誰が読んでも同じ意味にとれる必要があり、ある種数学的な厳密性のある記号ともいえます。ある概念を契約書上の言葉で表現する際には、どのように表現するか頭を悩ますことになりますが、その際にも条項のサンプルがあると非常に役立ちます。

私も先日、その案件特有の特殊な概念で、その概念を契約上表現したいと思ったときに、その言葉をテーマにMNTSQを使って契約書をすぐに検索し、活用できたという体験がありました。

金井:
依頼者に対してよりよいサービスを提供するために、契約書全体を網羅的に確認する作業のほか、特定の条項について、様々なサンプルを確認して当該条項の意味合いを分析し、具体的な案件に応用するといった作業が生ずることが多くあります。

弊所における従来の検索システムだと、検索結果をダウンロードして、その中に求めていた条項が含まれているかを確認する必要がありました。膨大なファイルを検索対象とするため、検索結果の表示に時間を要する上、逐一ファイルを開いて確認する必要があるため、検索結果の確認を横断的に行うことができないという点に、使いづらさを感じておりました。

その点、MNTSQだと、契約名称や条項名などで絞り込み検索ができ、求めている条項だけをピックアップしてリスト的に一覧性ある形で確認できるようになったことで、検索のスピード性、条項修正の労力が大きく改善されたと感じています。

また、案件によっては、契約書等の書面を一から作る場合もあります。MNTSQには、基本となる契約の雛形が複数アップロートされておりますので、そういった雛形を用いることで雛形を探す時間の短縮にも繋がったと思っております。

クイックに検索できる利便性があるので、今では毎日MNTSQを使っています。

  • MNTSQを活用いただく上での工夫やポイントはありますか?

カオ:
法律事務所という特性上、秘密管理が重要です。すべてのナレッジをシェアすることには限界があります。NO&Tでは、秘密管理を徹底していますので、現在動いている案件は、アップロードしてもよいものだけを匿名化して、手動でアップロードしています。

また、どれがいいサンプルなのかを見極めるには、一定の経験も必要だと思っています。テクノロジーは、ある程度の専門性がある人の生産性にレバレッジをかけ、指数関数的に生産性を向上させるものだと感じています。例えば、英語が全くできなければ機械翻訳があってもなかなか英語で仕事することはできないですが、英語がある程度できる人が機械翻訳を使うと、英語でのインプットやアウトプットの量と質が飛躍的に伸びるようになると思います。MNTSQと弁護士の関係もそれだと思っています。よい弁護士が、よいリーガルテックを活用することで、良いインプットがされ、良いアウトプットがたくさん出せるようになっていく。そのためにも、後輩にはどんどんMNTSQを使って、まずはいいサンプルをしっかり探すように伝えています。

さらに、NO&Tでは、分野ごとの経験豊富なパートナーが推奨として挙げているものを推奨集としてMNTSQに残しています。

なぜこれが推奨されているかという背景も含めて、最新の実務に沿ったものが多数上がっているため、教育の観点からみても、大きな効果があると思います。

また、契約データにメモを残すことができる付箋機能があるので、いわば食べログの口コミみたいにメモを広めていこうという試みもしています。

  • 今後の活用の展望について教えてください

カオ:
契約書以外にも、メールやメモランダム形式でのアドバイスも行うのですが、所内で複数の弁護士が同じ質問を色々なクライアントからいただいていることがあるはずなので、そのような形式の過去のナレッジもうまく共有できると事務所全体での効率化につながるんじゃないかと感じています。

リーガルテックによって、とにかくタイピング時間を減らして、作業的な業務はクリックとタップだけでできるようになるのが理想です(笑)そうすることで、より頭を使うことに注力し、本質的な業務にリソースを集中できるようにしたいと思っています。

金井:
アップロードされるサンプルが多くなればなるほど、MNTSQの利用価値が上がっていくと思います。これまで以上に、様々な分野のパートナー、アソシエイトが参画することにより、多様な分野のサンプルをデータベースに上げていきたいですね。

また、MNTSQの自動ドラフティング機能も気になっています。例えば、私が主に担当しているプロジェクトファイナンスでは、金融機関やスポンサーと協議してタームシートを作成した上で、タームシートで合意した事項をベースにローン契約をドラフトするのですが、ローン契約の作成は手作業で行う必要があり、案件によっては、200頁を超えるような契約書もありますので、手作業でドラフトアップすることは相応の労力を要することになります。自動ドラフティングのような機能で、タームシートで合意した内容を選択式で入れていけば、システムが自動で適切な条項を組み合わせたファーストドラフトを出力してくれるようなことができれば、作業効率が上がるのではと感じています。



カオ様、金井様、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。