本格的な全社DXの要に。法務ナレッジ基盤構築プロジェクトの進め方

本格的な全社DXの要に。法務ナレッジ基盤構築プロジェクトの進め方

第一三共株式会社

導入の背景
  • ・法務リスク管理実現の前提となる、統一的な法務ナレッジ基盤の構築
  • ・法務部員の世代交代によるノウハウ喪失の防止
導入の効果
  • ・交渉過程を含む過去ナレッジの共有による利便性向上および育成効果
  • ・契約の適正な履行管理の糸口として、MNTSQ契約管理を活用

医薬品の研究開発・製造・販売を行う国内有数の製薬企業である第一三共株式会社。「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供する」をミッションに新薬の創出に注力し続けており、グループ会社ではOTC医薬品(処方箋なしで受け取れる医薬品)、ワクチン、ジェネリック医薬品など幅広い製品の研究開発を手掛けています。2020年に「DX推進本部」を立ち上げ、各事業部と密に連携しながら全社のDXを伴走しています。今回、法務関連のナレッジマネジメントの解決策としてMNTSQを導入いただきました。

導入に至ったご検討背景や、導入後の変化について、DX企画部と法務部の皆様にお話を伺いました。

<参加者>
DX企画部 全社変革推進グループ 主任 道越 安章様
法務部 法務グループ 弁護士 茅野 隆太様
法務部 法務グループ 井上 真佑様
法務部 法務グループ 小野 昂士様
※以下、敬称略
※2023年12月時点での役職です

管理方法が統一されておらず、各事業部の契約状況の把握が困難に

  • 法務部の組織体制・状況について教えてください。

茅野:
法務部には20名在籍しており、月間100件ほどの契約レビュー・管理を担っています。
事業部とはメールベースでやり取りしています。部内で用いる案件記録のシステムは導入していたのですが、担当者によって記録する情報量にばらつきがあったので、例えば依頼部署と回答日、最終版のみ記録して、なぜこのような修正が入ったのかなどの経緯は残っていない案件が少なくありませんでしたね。

井上:
契約審査について、一定の基準を満たすものは法務部に相談、そうでないものは相談を任意としており、事業部側の判断に委ねる案件も多いです。各事業部内で完結してしまう契約については、法務部でどこまでレビューを支援したのか把握できない契約もありましたね。

法務部 法務グループ 井上 真佑様

DX推進の一環でリーガルテックの導入を検討、ナレッジマネジメントの整備を優先してMNTSQを導入

  • どのような流れでリーガルテックの導入を検討され始めたのでしょうか。

道越:
全社的なDX推進の一環で行っていた法務部とのディスカッションの中でリーガルテックの活用を検討しました。当社では2020年4月に「DX企画部」「ITソリューション部」「データインテリジェンス部」の3つの組織からなるDX推進本部が立ち上がり、私が所属するDX企画部はDX戦略の策定を担っています。
DXによって解決したい課題を整理していく中で、法務まわりのリスク管理は必須であり、まずは法務関連で優先して解決すべき課題を洗い出し、その解決手段としてリーガルテックの導入が妥当ではないかと議論が進んでいきました。
リーガルテックについて調べてみると、まだ市場が立ち上がったばかりで、ツールごとで解決できる課題が全く異なる印象を受けました。

ですので、リーガルテック関連ツールの調査を進めつつ、当社にとって必要な要件を議論して洗い出して最適なツールの選定を進めました。

  • MNTSQ導入の決め手になったのはどのようなポイントだったのでしょうか。

茅野:
法務まわりの課題を洗い出していく中で見えてきたのは、何よりレビューノウハウの継承問題を解決すべきではないかという点です。法務部は生き字引的な方が比較的多いのかも知れませんが、いずれは世代交代が起こるのでナレッジの蓄積が必要ですし、特に弊社ではここ数年で法務人材が多く入れ替わっているため、これは大きな課題でした。せっかく先人が蓄積してきたノウハウを次の世代に残さなければ企業としての損失が大きい。契約書のレビューに関してはどうしても属人化してしまいがちではあるのですが、ツールを活用してナレッジ基盤を構築できないかと検討し始めました。

さまざまなツールを調査したのですが、データをしっかり蓄積し、活用可能な状態になるよう整備できるツールはあまりなくて。そこにMNTSQがぴったり当てはまったんです。法務部メンバーのナレッジをどうやって将来に送り出していくかというところを見据えた、一段視座の高いツールだと感じましたね。

法務部 法務グループ 弁護士 茅野 隆太様

  • MNTSQ導入にあたり、社内にはどのように説明されたのでしょうか。

茅野:
長島・大野・常松法律事務所が支援されているツールでもあるので、長いスパンでお付き合いできそうだという合意は取りやすかったですね。そもそも、本格的に法務DXを推進する上で、ユーザー側(事業部の担当者)の利便性より管理者側(法務部)の基盤を先に整備すべきだという共通認識がありました。

道越:
やはり背骨となる管理側の利便性は優先的に追求すべきだと判断しましたが、結果的にこれが良かったと感じています。一方、現場側からも評価は良かったですね。特にメール連携機能については、メールでのやり取りや添付資料が自動的にデータ化されて取り込まれるので便利だという声が多数あがりました。

DX企画部 全社変革推進グループ 主任 道越 安章様

目指していたナレッジ基盤の構築を実現。法務部の生産性向上にも寄与

  • 実際にMNTSQを導入してみての所感を教えてください。

井上:
日々の業務にとても役立っています。以前は、事業部とどのようなやり取りがあったのか、そのやり取りの中で法務部回答から追加でどのような修正を行ったのか、相手方にどのような修正案で提示したか等を把握できない案件もありましたが、MNTSQの導入によって、事業部とのやり取りがすべて記録されるようになり、案件ごとの経緯がすぐに把握できるようになったのはありがたいですね。

小野:
私は今年入社したばかりなので、特に恩恵を受けていると実感しています。事業部とのやり取りが残っているので途中からアサインされた案件でも後追いしやすいですし、論点や条項単位で検索をかけて類似契約の過去対応を拾えるので、以前の方針を把握した状態から考え始めることができます。また、MNTSQの活用の習熟度については、まだ個人差があるので、私から先輩社員にMNTSQを活用した契約書審査の方法についてアドバイスすることもあります。個人の専門性や経験の度合いに依拠せず、組織に貢献できる方法として、新人にとっても利用価値の高いツールだと思います。

法務部 法務グループ 小野 昂士様

茅野:
契約締結までの経緯をあとから言語化して整理するのはかなり大変なので、実際に一次資料を見ながら伝えられるのは良いですね。検索性に優れているので過去のドキュメントが探しやすく、どのメンバーとも共有できる環境が整備されていると感じています。

  • 生産性向上に貢献できているということでしょうか。

茅野:
そうですね。生産性を業務時間に対してどれだけ成果を得られたのかを測る指標と定義すると、その分母にあたる業務時間の削減に関しては皆が実感しているところだと思います。関連契約などを探す時間は確実に削減できていますし、案件対応にかかる時間は1件あたり平均で5-10分は削減できているかなと。

さらに、生産性向上の分子の部分、成果を創出する側面についても、明確な数値は出しづらいのですが確実に増えており、蓄積されてきたナレッジを踏まえたうえで有意義な議論ができる、新人教育にも貢献しているなどさまざまな付加価値が生まれていると思います。

道越:
あとは、経営課題の解決にも繋がっています。経営課題に繋がるようなリーガルリスク管理を行うため、契約の遵守を徹底するにはどうすればいいかというのは当社全体として重要な課題です。契約書の条項を各担当者がしっかり理解し、抜け漏れのないように管理していくことが重要ですが、MNTSQの契約管理機能が解決策として適用できるという話になり、課題解決の糸口が見えてきたというのも導入メリットとして挙げられますね。

今は契約レビューに使っていますが、今後は他の決裁・稟議や調達プロセスなど法務部の活動領域以外でも使えるよう議論が進んでいくだろうなと思います。

  • 最後に、リーガルテックに対して今後期待していることを教えてください。

道越:
期待しているポイントは2つあります。

1つは法務に閉じずに拡張していってほしいなということ。

法務部の機能はいくつか存在していて、契約書の審査、突発的なリーガルマターの相談窓口などさまざまあるなかで、契約レビューや法的リスク検討などは生成AI等のテクノロジーが発展していくと専門性のハードルが下がり法務部の人間でなくても対応できるようになる可能性があります。そうすると、法務部以外の事業やプロセスと密に連携するようになっていくのではないかなと考えています。

会社全体で使うことが求められていくのが良いだろうと考えていますので、「リーガルテックは法務部のもの」といったようなリーガルの世界に閉じこもるのではなくて、他の領域のテックやソリューションと融合してよりビジネスを推進してくれる強力なツールになっていくのではないかと思います。

もう1つはわかりやすさですね。素朴な疑問として、契約書文書は法務部以外の一般の従業員にはとっつきづらいですよね。個人的にはわざわざ難しく書いてるなといつも思っていて。MNTSQのようなツールを使って、文書に関するデータが各企業で蓄積できたら、もっと読みやすい文章で契約書を作成できる世界が来るんじゃないかなと。士業の方以外が使っていくうちに契約書然としたものを作るのではなくて、もっと端的に表現された文書になれば、特殊な知識がなくても誰でも扱えるようになってほしいですね。


第一三共株式会社の皆様、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

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